【監修】行岡病院リウマチ研究室長 村田 紀和先生
順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院 特任教授 小林 茂人先生
強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)は、主に脊椎や仙腸(せんちょう)関節(下図)が慢性の炎症によって障害される疾患です。骨と骨をつなぐ靭帯(じんたい)や骨と筋肉をつなぐ腱(けん)が、骨に付着するところに炎症が起こるのが特徴で、初期症状として多くの場合、背中から腰やおしりにかけての痛みやこわばりがあらわれます。ときには炎症が脊椎に近い肩関節や股関節に及ぶこともあります。
人の身体は、組織に炎症が起こると、もとの正常な組織に戻そうとする修復システムを備えています。しかし、炎症が長く続いた場合は修復システムが働いても、もとの正常な組織に戻すことが難しくなってしまいます。
強直性脊椎炎では炎症が慢性的に続くため、経過とともに靭帯や腱が正常な靭帯、腱に修復されず、骨に似た硬い組織に置き換わるという状態が生じます。その結果、脊椎などの骨と骨がつながって固まったようになり、動きにくくなってしまいます。
多くの場合、このような経過には10~20年という長い年月がかかります。しかし、症状が急激に出る人もいれば、痛みが徐々に広がっていく人もあり、パターンは十人十色です。
なお、初期の頃はX線撮影をしても変化がわかりにくく、また、血液検査などでも強直性脊椎炎だけに特定して異常があらわれる指標がないため、確定診断に至るまでに時間がかかることも少なくありません。